自分のために料理を作る: 自炊からはじまる「ケア」の話
はじめに
この本では、「自分のために料理が作れない」と悩んでいる方と一緒に、料理をする意味をあらためて考えることで、「料理したい」という気持ちが湧き出てくるといいな、ということを実践的に目指しています。p.12
前半では「料理する」という行為を分解して考えることで、なぜ料理が複雑で手に負えない、煩わしいものと私たちが思い込んでしまうのかを解説します。p.12
自分で作って食べる行為は、買ってきたものを食べるということとはまったく違った行為です。自炊ができるということは、自分の体調の移り変わりや生活の変化に合わせて、自分を労わり逢っていけるということです。この力があれば、ちょっとやそっとのことでは倒れないで生きていけます。
自分の人生の主役は自分です。
大切な自分を養い、励まし、喜ばせることができるのが料理なんです。
そしてそれを提供できるのが「自分」だとしたら、人生にとって「自炊」ほど強い味方はいないと思います。それでは、「自分のために料理が作れる」ようになる(かもしれない)扉をちょっと開いてみませんか?p.13-14
後半では実際に「自分のために料理できない」と悩む性別や年齢がバラバラな六名の参加者たちに対し、私が三ヵ月間「自炊コーチ」を担当しました。p.12
あとがき
というのも、この本を制作し始めた頃から仕事やプライベートで出会う方に「どうして自分のために料理を作るのって難しいのでしょうか」と問いかけてきました。その中で、料理にまつわる切ない記憶や癒えない傷、忘れてしまったようで身体が覚えているような何かを抱えている人がいることを、具体的なエピソードを伴って知ることができました。p.348
その願いを胸に、この本では私が今の時点で伝えられる料理の力の抜き方と、面白がり方、具体的なやり方をすべて伝えたつもりです。参加者それぞれのペースで進む心や生活の変化を見て、「あぁ、料理っていいものだなぁ」と何度も噛み締めました。p.350